親鸞会は、1958年に誕生した新興宗教に分類される仏教系団体です。正式名称を宗教法人浄土真宗親鸞会といい、富山県射水市に本部があります。会員数は5~10万人と言われており、親鸞を宗祖とする浄土真宗ルーツとしていますが、独立した宗教法人であるため組織上の関係はありません。
宗教に関心のない方にとって親鸞会と浄土真宗本願寺派(西本願寺)や真宗大谷派(東本願寺)との違いが、わかりにくいのではないでしょうか。ここではルーツである浄土真宗との関係や教義の違い、本尊の取扱や本部などについて触れていきましょう。
親鸞会の教義解釈の特徴は、雑行と雑修にある
親鸞会と浄土真宗との関係は、創設者である高森顕徹に由来します。高森氏は、もともと浄土真宗本願寺派の僧侶でしたが、1958年に独立組織である親鸞会を設立、その後、1970年代に浄土真宗本願寺派の僧籍を離脱、1980年代には本願寺派の僧侶らと宗義論争を行ったこともあります。
教義の特徴として宗祖である親鸞に加えて、南北朝時代に活躍し浄土真宗の実質的な開祖である覚如、本願寺中興の祖である蓮如らが残した文書に忠実な教義解釈を宗旨にしており、特に「雑行を捨てよ」の解釈についてについてこだわりを持っています。親鸞会における雑行とは「悪い心で行う諸善」であると解釈しており「悪い心を捨てる」ことこそが、本義であると主張します。
浄土真宗の流れをくむ本願寺派や真宗大谷派らが参加する真宗十派の解釈では、自らの善なる行いを救いに役立てようとする行為を「雑行」、またお経を読んだり供養したり、本尊に祈ることで助けを求める行為を「雑修」と呼んでおり、いずれも自力の心で行うことを捨てるべきだと考えています。
いずれも浄土真宗をルーツとしていますが、親鸞会と浄土真宗十派では「雑行」と「雑修」の解釈の違いについて教義上の差異があるようです。また親鸞会は真宗十派などの教えを「善のすすめ」がない、後生の一大事(生死の問題を解決して後生に浄土に往生する)を否定していると主張しています。
親鸞会の本尊は、本部から貸与される
親鸞会の本仏は阿弥陀如来です。また本尊は、親鸞直筆の「南無阿弥陀仏」を名号本尊にしています。これは、仏教開祖である釈迦が大無量寿経で述べた「其の名号を聞きて、信心歓喜せん」と蓮如が御一代記聞書で述べている「他流には名号よりは絵像、絵像よりは木像というなり。当流には木像よりは絵像、絵像よりは名号というなり」に基づいたものです。同じ浄土真宗をルーツとしながらも、木像や絵像などが多く保存されている真宗十派系寺院との違いともなっています。
本尊は、親鸞会本部から会員に貸与されます。貸与精度を採用しているのは、おろそかに扱われることを避ける目的があります。そのため本尊の所有権は本部にあり、勝手に手放したり売却したり、処分すると規約違反になります。
もし貸与された会員が亡くなった場合は、本尊を本部に返還しなければなりません。これは親鸞会を退会する場合でも同様となっており、貸与されている間はおろそかに扱わないでほしいと考えているからです。
会員になると会費を支払うことになりますが、金額などによって全12通りあり、目的に合わせて選べます。途中変更できるので、経済的な環境の変化に合わせられます。集められた資金は会館などの建設に使用されています。
富山県射水市の本部について
親鸞会の本部は、富山県射水市にあります。北陸自動車道・小杉インターから車で3分ほどのところにある広大な敷地内に正本堂がそびえています。正本堂内に2000畳もの大空間が広がっていて、その奥には大きな仏壇と親鸞直筆の「南無阿弥陀仏」の名号本尊が控えます。仏壇の上にある大きな梁壁スペースに大型ディスプレイが備え付けられていて、訪れた会員らが本尊を見ることのできるよう工夫されています。
お経や講話などを聞くことを重視した設備が充実しており、聴覚障害者のための難聴者用受信機、高齢者や車椅子が欠かせない方のためのバリアフリー構造である他、身障者用トイレもあります。小さなお子さんを連れた家族連れのための子供部屋、万が一に備えた医務室、外国人向けの通訳ブース(英語・中国語・ポルトガル語対応)があり、申し込めば受信機を貸してもらえます。老若男女や国籍に関係なく、全会員が利用できる体制が整っています。
施設内に広大な駐車場設備が整えられているため、マイカーで訪れることも可能、駐車場から正本堂まで地下道が整備されているので、雨の日でも濡れることなく移動できます。また地下道にはルーツとする浄土真宗の歴史を説明したパネルがあり、鎌倉時代からの成り立ちを学べるよう工夫されています。敷地内に日本庭園が整えられているので、天気の良ければ散歩を楽しめる環境です。
まとめ
親鸞会は、1958年に本願寺派の僧侶であった高森顕徹によって設立された宗教法人であり、浄土真宗をルーツとします。教義の特徴として仏教開祖の釈迦や親鸞、覚如や蓮如が残した経典や文書に忠実な解釈をしており、悪い心や邪な心を捨てて「善を勧める」ことに力を入れています。
阿弥陀如来を本仏とする点では伝統的な浄土真宗の寺院と同じですが、本尊には木像や絵像などがなく、親鸞直筆の名号本尊のみのみです。また本尊は、本部から会員への貸与制度を採用しており、会員が亡くなったり、退会する場合は返還しなければなりません。